オキーフは項垂れている。
目をかけていたものが目の前で死に体となっているのだ。当然だろう。
先程まで銃撃戦を行っていたとは思えないほど辺りは静かである。
生者よりも死者が多い空間で、ざあざあとスプリンクラーが消すべき炎もない場所で雨を降らしている。
燃え尽きた命から装備を奪い終えたフロイトが、淡々とオキーフに声をかける。
「ソイツはもうダメだ。諦めろ」
「いや……コイツはまだ……まだいける……っ」
理解はできても、感情を抑えられないのだろう。
人間である以上、合理性に特化することはできない。感情という余計なノイズが邪魔をする。
目の前のソレは誰がどう見ても終わっている。
それにも関わらず、オキーフはソレに手を伸ばす。
「乾燥させれば、まだコイツは吸えるはずだ!」
制圧した部屋にあった紙タバコは、とある惑星でのみ採取可能な最高品質の葉を使用したものだ。
タバコを嗜む者であれば、誰もが憧れる一品である。
品のある装丁が施された箱は無惨にも撃ち抜かれ穴が開き、銃撃戦で破損したスプリンクラーの放水により完全に水没していた。
タバコは戦場における数少ない嗜好品の一つである。
潜入時に目敏くも煙の女神に気づいてしまった。こんな思いをするのであれば、知らぬままに終わりたかったのだろう。
消えることのない耳鳴りに苦しめられる毎日。
そんなうんざりする日々に僅かな安らぎを与えてくれる麗しのキミを目の前で喪失した男が立ち上がるのは、
偽装工作に失敗したオールマインドからの報告と対処指示を受けてからだった。